ニート、ついに親から最後通牒を受ける

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先日の夜のことだ。

僕は実家の台所でパスタを茹でていた。隣接した居間では、仕事休みの母親がテレビを見ながらビールを飲んでいた。テレビでは就活についてのニュースが流れていて、僕はああもうそんな時期かと思いながら鍋の中のパスタをかき混ぜていた。まあニートの自分には関係ない話だけどね、と思っていたのもまた事実である。

するとニュースを見ていた母親が突然こちらを振り返って、「あんた、今年こそはちゃんと就職するんでしょうね」と声をかけてきた。酒に酔っているようで、声には多少の怒気が含まれているのが分かる。さっきの思考が無意識に口に出ていたのか?と僕は驚愕したが、そんなことはなくニュースを見た母親が反射的に話しかけてきただけらしい。

僕はとりあえず場を収めるために「まあ貯金がなくなったら働くから…」と答えた。金がある限り働く必要はないというのが僕のスタンスである。金がなくなったら改めて働けばいいのだ。残念ながら僕の回答は母親のお気に召さなかったようで、「ふざけんじゃないわよ」と食ってかかられる。

だが、説教を受けたところで僕には働くつもりは早々ない。話は平行線、というよりもむしろ乖離していく一方なのは目に見えている。さっさと自分の部屋に帰りたかったのだが、まだパスタが茹で上がっていないので逃げることもできない。パスタが茹で上がるまであと4分。

「1日中部屋にこもってパソコンばかりやって、いい年して恥ずかしいと思わないの?」と母親が声を荒らげる。パソコンを開いているからといって遊んでいるわけではなく、金を稼ぐためにブログを書いていたりもするので、僕としては反論したい気持ちもあった。が、酔っ払い相手に議論しても仕方がない。ここは無視を決め込むことにする。あと3分。

僕が無視を決め込んだので、何を言っても無駄だと思ったのか「とにかく今年中には何とかしなさいよ」と母親が言う。続けて「今年中にはこの家から出ていきなさい」とも。説教というよりも通告のようだった。さすがにこれには無視をするのも憚られたので、「…分かったよ」としぶしぶ同意しておく。茹で時間はまだ2分残っているが、まあ多少アルデンテでも構わない。僕は急いで鍋から皿にパスタを移し、自分の部屋へすごすごと退散した。

部屋へと戻った僕は机の前に座り、ほんのりと湯気を上げているパスタに生風味たらこソースをかける。適当に混ぜて口に運ぶが、正直あまり美味しいとは思えなかった。麺が多少硬かったのもあるし、何より親から説教を受けた直後というシチュエーションが、パスタの不味さにより一層の拍車をかけていた。

パスタを頬張りながら僕は考える。あれほど怒っている母親の姿を見るのは久しぶりのことだ。僕が恋人との同棲を解消し、実家に戻ってきたのが昨秋のこと。それから数ヶ月の間、母親は多少の嫌味を言う程度で、働かない僕に対して本格的に説教をすることはなかった。先ほどの母親の怒り具合には正直驚いたというのが本音である。

だが、今まで口に出さなかっただけで溜め込んでいるものはあったのだろうなとも思う。酒が入っているのもあって、今まで溜め込んできた僕に対する不満が爆発したというのが実情だろう。「酔った時こそ本音が出る」とはよく言ったものだ。

考えてみれば、母親からしたら怒るのも当然である。自分は毎日働きに出ているのに、いい年した息子は家でダラダラ過ごしている(ように見える)わけだ。立場が逆なら僕でも怒りを覚えるだろう。

とにかく、これは少し気を引き締めなければならないなと思う。今年中には家を出ていくように言われてしまった以上、何とか必要なだけの金を稼がねばならない。一人暮らしをするとなると、貧乏生活だとしても月10万円は欲しいところだ。家賃、光熱費、食費はどうしてもかかるし、部屋を借りるなら敷金や礼金も必要になる。家賃の安いボロ屋に住むとしても、最低でも月7、8万は欲しい。シェアハウスに住むという案も浮かんだが、コミュ症の僕にはハードルが高すぎる。却下だ。

とりあえず当面はネット収入を増やすことに専念しよう。今はまだ月に数千円しか稼げていないが、これが数万円になればかなり心強い。足りない分はバイトでもして補えば、実家を出ていくことも不可能ではないだろう。昔のように新聞配達をしながら暮らしていくのもアリっちゃアリだ。

よし。今は5%くらいしか出していない本気を、30%くらいまで出してみるか。100%を出さないのは経験上だ。僕のエンジンは回転数を上げすぎるとすぐにオーバーヒートして動かなくなってしまう。というわけで30%。それにシェイクスピアだってこう言っているのだ。

「Wisely, and slow; they stumble that run fast. (賢明に、そしてゆっくりと。速く走るやつは転ぶ。)」