ニート、元カノから手紙をもらう

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先日、僕のもとに元カノからの手紙が届いた。元カノと言っても前の前の彼女なので、元々カノと書いたほうが正確かもしれない。

最初は誰かのイタズラかとも思った。でも確かに差出人の名前は元カノのものだったし、そもそもイタズラを仕掛けてくるような親しい友人は今はいない。それに手紙の消印は彼女の実家がある町のものだった。イタズラにしては手が込みすぎている。

手紙は薄いブルーの封筒に包まれていた。とにかくハサミで封を開ける。中には便箋と写真が1枚ずつ入っていて、写真にはとある大学の入学願書が写されていた。

頭の中に疑問符がいくつも浮かぶ。これは一体どういうことなのか。全く要領を得ない。
答えを探して、2つに折り畳まれた便箋を開く。そこには丁寧な字で、おおよそ下記のようなことが書かれていた。

「年末に部屋の大掃除をしていたら、その写真の入学願書を見つけました。あなたから貰ったものですが、覚えていますか?懐かしくなって手紙を書きました。もう一度話がしたいので、良かったら連絡をください――」

さすがに手紙の文章をそのまま載せるのもアレなので、内容はかなり端折っている。手紙の最後には、彼女のものと思しき電話番号とメールアドレスが記されていた。

手紙を最後まで読み、もう一度読み返したところで僕は考える。とりあえずイタズラではなさそうだ。手紙に書かれた丁寧な字には確かに見覚えがあった。ああ、そういえば字が綺麗な子だったなと思い出した。確か子どもの頃に書道を習っていたと言っていたっけ。

彼女と付き合っていたのは高校生から大学生にかけての時期で、最後に会ったのはもう10年近く前のことになる。別の大学に通い始めてからは少しずつ話が会わなくなり、疎遠になり、終いには別れてしまった。まあよくある話だ。

そんな彼女が今になって僕に手紙を書いてきた。これは一体どういうことだろう。手紙の内容を素直に解釈すれば、部屋の掃除をした時に願書を見つけて、渡し主の僕のことを思い出した。それで懐かしくなって手紙を書いた――ということになる。

筋は通っている。通ってはいるが、それでわざわざ手紙まで書くものだろうか。僕だって昔の恋人を思い返すことはあるが、だからと言って連絡を取ることはない。これは僕が男だからそう思うのであって、女性であればまた違う考えなのかもしれないが。

そもそも何故メールや電話ではなく手紙なのか、ということについて考えてみたが、至極当然な方法であることに気がついた。彼女と別れてから、僕はすぐにアドレス帳から彼女の名前を消した。それから何度かメールアドレスを変えているので、彼女のメールが僕に届くわけがない。

電話番号は変えていないが、僕は電話が大の苦手なので基本的には電話に出ない。それが登録されていない番号ならなおさらだ。ここ何ヶ月か見知らぬ番号から数回着信があった気がするが、もしかしたらそれが彼女だったのかもしれない。

1通り考えてみたが、結局肝心なところは何も分からないままだ。とにかくメールを送ってみることにする。本人に聞くのが一番確実で手っ取り早い。とりあえず差し障りのないように手紙のお礼を伝える文面を書き、「久しぶり。元気?」と無難な内容のメールを送る。

しかし、一向に返事が返ってこない。それも3日もである。正直この時点で僕のやる気はほぼゼロに近かったのだが、何かの手違いでメールが届いていない可能性もあるので、SMSで全く同じ内容のメールを送ることにした。すると今度は1時間足らずで返信が来た。

元カノ曰く、「何て返そうか悩んでいたら3日経ってしまった」ということらしい。思わずため息が出た。自分から手紙を送っておいて、返事のメールを3日放置するとは一体どういうことなのか。意味が分からない。同時に僕は彼女と別れた理由について思い出していた。ああ、そういえばこういう女だったな、と。

何というか噛み合わないのだ。連絡のテンポが全く噛み合わない。僕は基本的にメールを読んだらすぐに返す。内容によっては時間をとって考えることはあるが、少なくとも3日も放置することはない。ただ、彼女は違うのだ。すぐに返事が返ってくることもあれば、今回のように数日後に返ってくることもあった。そのまま音沙汰なしということも多々あった。全てが彼女の気分次第で、送った側の都合を全く考えないのだ。

会話も同様に噛み合わなかった。同じ話題について話しているはずなのに、何故かお互い別のものについて話しているような違和感があった。こちらの質問に対して明後日の回答が返ってくることも多かったし、何というか同じ場所にいながら真逆の方向を見ているような感覚が僕と彼女の間にはずっと存在していた。

そもそも何で付き合ったのかが思い出せない。確かに顔はそこそこ可愛かったけれど、話の合わない女と一緒にいてもつまらないはずなのに。若気の至りというやつだろうか。まあいい、これから先も僕と彼女の歯車が噛み合うことはないのだろうから。

僕は元カノに返事をするのを止め、スマホを布団の上に放り投げた。ついでに自分の身体も布団の中に潜り込ませる。ああ、女と違って布団は最高だ。気分が乗らないからと言ってどこかへ行っちまうこともないし、何より温かみに満ち溢れている。

今回の教訓。やはり別れた昔の恋人とは連絡を取るべきではない。別れた理由を思い出してウンザリするだけだ。